本研究の目的は,金融機関の経営統合が借手企業に関する「ソフトな情報」の収集に与える影響を分析することである.2005年に実施された「関西地域の企業金融に関する企業意識調査」で得られた中小企業の個票データを用いて分析したところ,合併はソフトな情報の生産を減少させる,という結果が得られた.これは,合併によって経営組織が大規模化,複雑化し,「ソフトな情報」が生産されにくくなるという仮説,および合併に伴う費用削減(リストラ)によって「ソフトな情報」が失われてしまうという仮説に整合的である.