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論文要旨

Vol. 58, No. 3, pp. 263-283 (2007)

『特許・知財の法と経済学』
青木 玲子 (一橋大学経済研究所), 矢﨑 敬人 (工学院大学グローバルエンジニアリング学部)

特許制度の最近の経済学,特に法と経済学の見地からの分析を紹介する.最近の知財の分析の特徴は (1)知的財産制度は市場支配力を法的に創出するため,長期的な技術開発投資と短期的な経済効率の犠牲のバランスであることと,(2)企業や個人は法的枠組みの中で戦略的に行動していることを認識して,諸制度の経済厚生的評価を行っていることである.本論文では特許の諸制度(有用性基準,職務発明,試験・実験例外,専有可能性確保と先使用権)と特許施行(ライセンス,侵害訴訟),特許価値を取り上げる.多くの分析に共通する序列的技術開発(sequential innovation)もしくは累積的技術進歩(cumulative innovation)にも言及する.