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論文要旨

Vol. 58, No. 2, pp. 122-135 (2007)

『セキュア遂行―理論と実験―』
西條 辰義 (大阪大学社会経済研究所・大阪大学サステイナビリティサイエンス研究機構・東京工業品取引所市場構造研究所・CASSEL at UCLA), 大和 毅彦 (東京工業大学大学院社会理工学研究科)

真の選好表明が支配戦略であることを要求する戦略的操作不能性は,社会選択理論において重要な概念として多くの研究がなされてきた.しかしながら,この概念は重大な欠陥を持っている.特に,ほとんどの戦略的操作不能なメカニズムには,多くのナッシュ均衡が存在し,悪い均衡結果を導きうる.この問題に対する一つの解決方法は,支配戦略均衡とナッシュ均衡での両方における二重遂行,すなわちセキュア遂行を要求することである.二つの戦略的操作不能なメカニズムに関する実験を行った.一つのメカニズムはセキュアではなく,多くの悪いナッシュ均衡を持ち,他のメカニズムはセキュアで,唯一の良いナッシュ均衡を持つ.被験者が支配戦略をとる比率は,セキュアでないメカニズムの方が,セキュアなメカニズムよりも有意に低いことを観察した.