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論文要旨

Vol. 58, No. 1, pp. 15-30 (2007)

『家計所得過程の共分散構造分析』
阿部 修人 (一橋大学経済研究所), 稲倉 典子 (筑波大学大学院システム情報工学研究科)

日本の家計パネルデータを用い,有配偶者世帯の男性勤労所得および労働時間プロセスの動学的特徴を共分散構造分析を通じて分析した.また,アメリカでの先行研究であるAbowd and Card(1989)と比較し,日米家計の比較分析も行った.その結果は,(1)日本の所得変化率の分散はアメリカの1/3程度である,(2)所得変化率の一階のラグとの共分散はマイナスであり,分散の1/2弱である,(3)二期以上はなれると,相関はほぼ消滅する,(4)所得と労働時間の相関は極めて小さく,多くの場合有意に検出されない,の4点である.(2)と(3)はアメリカでの先行研究とほぼ同じであり,(1)と(4)が大きく異なる.これは,日本の家計所得過程の傾向としてはアメリカと似ているが,いくつか重要な相違があることも同時に示している.所得・労働時間をRandom WalkとMeasurement Errorの混合モデルを用いて推計したものは,MA(2)よりも良好なFitを得ることが出来,所得分散の2/3程度がMeasurement Errorであるという結果を得た.