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論文要旨

Vol. 57, No. 3, pp. 193-207 (2006)

『福田徳三の厚生経済研究とその国際的環境』
西沢 保 (一橋大学経済研究所)

本稿は,黎明期における日本の経済学の開拓者,福田徳三の厚生経済研究を歴史的,思想的コンテキストの中で検討し,福田の厚生経済研究を通して,創設期の厚生経済学と福祉国家との関係,創設期の厚生経済学の多元性に光を当てることを目的にする.福田は恩師ブレンターノとの共著である処女作『労働経済学』から,労働問題を基礎にした厚生経済研究を意図していた.マーシャルやピグーの厚生経済学に強く惹かれながら,福田はアメリカの制度主義者と軌を一にして,ラスキンの強い影響下に人間的福祉の経済学を構築しようとするホブソンの厚生経済学,そして福祉国家建設を進めるイギリスの現実に自らの立場との共通性を見出した.