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論文要旨

Vol. 57, No. 2, pp. 136-150 (2006)

『ロシア経済構造の変容(1991~2005年)』
田畑 伸一郎 (北海道大学スラブ研究センター)

1991年からの体制転換のなかで,ロシア経済構造がどのように変容したのかについて,次の4つの特徴を明らかにした.(1)1998年までの経済縮小期において蓄積に依拠する従来の再生産メカニズムが崩壊し,1999年からの経済回復期において個人消費に依拠する新しい経済成長メカニズムが生まれている.(2)この成長メカニズムの転換においては,為替レートと石油輸出が決定的な役割を演じた.石油輸出によって稼いだ外貨により,消費財を輸入するという形で,個人消費に依拠する成長メカニズムが形成されている.(3)成長メカニズムの転換あるいは経済構造の転換は,比較優位の変化に規定された.石油などの鉱物資源の比較優位と家電・自動車を含む消費財の比較劣位が明瞭になってきており,それに応じる形で上記の成長メカニズムが形成されている.(4)経済回復期における石油価格の異常な高しょうは,新しい成長メカニズムの形成に大きな影響を与えている.