本論では急速な新規企業の参入による激烈な企業間競争とそれに続く退出をともなっていた1948-1964年の日本オートバイ産業を対象にして,産業の発展プロセスを明らかにすることを目的とする.発展段階ごとの特徴を明確にするため,対象となる期間を製品の質が低く企業参入が続く「参入期」,製品の質の向上が始まり競争力のない企業が退出していく「退出期」,企業間における製品の差が顕著になり市場構造が寡占的な状態になっていく「収束期」の3段階に分けた.そしてそれぞれの段階において,産業集積などが技術伝播や技術革新にたいしていかなる影響を与えたのかを企業レベルのデータを用いて統計的に検証した.この結果から産業における技術向上が重要となる段階に達していくにつれ,企業立地や企業の Learning by doing が企業生存や産業発展に重要な役割を果たしていたことが明らかとなった.