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論文要旨

Vol. 56, No. 1, pp. 53-68 (2005)

『旧ソ連におけるザカフカス諸国の経済発展』
西村 可明 (一橋大学経済研究所), 杉浦 史和 (一橋大学経済研究所)

本稿の目的は,ソ連時代におけるザカフカス諸国の経済発展を,近年収集可能になったマクロ経済統計資料に依拠して回顧し,その素描を与えることである.ザカフカスは,カスピ海の石油生産とそのヨーロッパへの輸送経路になっているため,また複雑な民族問題を抱え政治的に不安定であるため,最近特に注目を浴びてきている.しかしザカフカス経済発展の本格的研究は,これまで殆ど行われてきていない.その理由の一つは,従来共和国別マクロ経済統計の入手が大幅に制限されていた点にある.しかし近年は,ロシア国立経済文書館所蔵のソ連統計局作成統計の秘密解除と公開がかなり進み,また共和国別マクロ統計がCIS統計委員会によって公表されるようになった事もあり,情報開示にかかわる問題はかなり克服されてきた.本論文ではこの様な新条件を活用して,ザカフカス諸国の経済発展を中心にマクロ経済的に考察し,ソ連における共和国経済発展の諸類型を示し,共和国間経済格差の実態の解明を試みる.