本稿の目的は,日本においてプラスの技術的ショックが総労働時間を増加させるか,減少させるかを実証的に明らかにすることにある.近年のアメリカのデータを用いたいくつかの研究(例えばGali(1999))は,技術水準の上昇が総労働時間を低下させると主張している.これに対する反論も多く提出されている.我々は既存の研究が用いてきた手法には重大な限界があると主張する.この限界を克服するため,Uhlig(2001)の提案した符号制約つきVARを拡張した独自の手法を提案する.その結果,技術水準の上昇は総労働時間を増加させる,という結論のほうがよりもっともらしいことが示される.この結果は,景気循環の主因を技術的ショックに求める理論と整合的である.