本稿の目的は,「福祉国家」のあり方を巡る近年の論争において提起されている「基本所得」政策の,資源配分メカニズムとしての規範的特性を明らかにする事である.最初に,「基本所得」政策の代表的提唱者でヴァン・パレース(Van Parijs(1995))に依拠しつつ,「基本所得」制構想の規範理論的基礎付けを与える「リアル・リバータリアン」論を紹介し,それによって明らかにされた「基本所得」政策が満たすべき規範的基準を,公理的資源配分理論の枠組みにおいて定式化する.さらに,「基本所得」政策と整合的な資源配分ルールの理論的構成可能性を探求する.そのようなルールは,労働スキルの格差のない経済環境では,均等便益解として特徴付けられる一方,スキル格差のある経済環境では「非支配的多様性」条件を満たすいくつかのパレート効率的配分ルールについて紹介・分析される.