HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 55, No. 2, pp. 171-184 (2004)

『景況感とアンケート調査―変化方向と水準は異曲同工か?―』
浅子 和美 (一橋大学経済研究所), 原田 信行 (筑波大学大学院システム情報工学研究科)

本稿では,景況感についてのいくつかのアンケート調査をめぐって,一見すると相反する複数の景況感がどのようにして形成されるのか,そもそもそれらは経済主体の行動として整合性がとれたものなのか、といった問題を考察する.その際,景況感を経済活動の水準を基に判断させるものと,経済活動の変化方向を基に判断させるものがあることに注目し,いくつかの視点からアンケート回答のデータを統計的に検証した.景気循環のサイクルにおいて,理論的には,水準に対して変化の方向は4分の1のサイクル分だけ先行する関係にあるのが味噌となる.結果は,水準と変化方向による景況感のアンケートの回答は,相互に必ずしも整合的に形成されているとはいいがたい面があるというものである.いいかえれば,アンケート回答では,水準と変化方向は明確に峻別されているわけではない.こうした問題に対する分析としては本稿のそれは入り口に過ぎない.今後のさらなる研究蓄積が望まれる.