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論文要旨

Vol. 54, No. 4, pp. 300-314 (2003)

『90年代ミャンマーの稲二期作化と農業政策・農村金融―イラワジ管区一農村調査事例を中心に―』
藤田 幸一 (京都大学東南アジア研究センター)

本稿は、イラワジ・デルタの新デルタ部の一農村調査事例(2001年調査)の検討を通じ、1992/93年度以降の乾期米増産計画の下でのミャンマーにおける農村経済変容の実態と問題を明らかにする。村人の労働出役による用排水路網整備を基盤とする灌漑ポンプへの農民投資が稲二期作化という農業技術変化の成功の鍵を握った。しかし米の民間輸出禁止の下で稲作交易条件の著しい悪化が進むに伴い、計画は90年代半ば以降頭打ちになった。そして2000年半ば以降1年半以上も継続した国内米価暴落が襲い、それに対する政府の無策と計画栽培制度の堅持が稲作農民に大きな打撃を与えた。それに加えて、農村金融市場の不備、とりわけインフォーマル金融の比重の高さ、そこでの月利4~10%以上にも及ぶ高金利が、資本集約的な乾期米生産にとってもう1つ重大な阻害要因であることが明らかになった。