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論文要旨

Vol. 54, No. 4, pp. 289-299 (2003)

『贈与交換論からみた職務への動機づけ―ラオス・カンボジアの工場労働者を対象として―』
大野 昭彦 (青山学院大学国際政治経済学部)

労働者を職務に動機づける労務管理は、工場生産におけるX非効率を改善する有効な手段のひとつである。これまで先進産業社会を対象として、この課題は議論されてきた。本稿では、ラオスとカンボジアという工業化の初期段階にある社会の工場労働者(N=791)を対象とした質問票聞取調査から、主要な動機づけ仮説(経済主流派仮説・アカロフの部分的贈与交換仮説・社会的贈与交換仮説)の検証をつうじて開発途上国における動機づけ要因の検出を試みた。本稿では、労働意欲と怠業というふたつの側面で労働意欲を捉える。主たる結論は、労働意欲については社会的贈与交換がもっとも有効な枠組みを提示しており、アカロフ仮説も社会的贈与交換仮説に包摂される。主流派仮説(経済的報酬)は労働意欲には効力をもたないが、怠業を阻止する効果は認められる。