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論文要旨

Vol. 52, No. 1, pp. 2-15 (2001)

『日本の財政投融資』
岩本 康志 (京都大学経済研究所)

本稿はわが国の財投制度に関する経済分析の現状の到達点を評価し、将来の展望をおこなう。財投の論点を、目的の妥当性、手段の妥当性、手段の有効性に階層的に分類する視点を導入したことが特色である。金融自由化の進展によって、金融活動において政府の果たすべき役割は変質・縮小してきたと考えられる。現在では、財投が政策目的として正当化できるのは、民間では上可能なリスク負担、貸出市場での情報格差への対処にしぼられてきた。手段の妥当性に関して、公的金融機関による直接融資がなぜ望ましいのかの検討がさらに進められるべきであろう。とくに実証研究の蓄積が足りず、今後の発展が待たれる。公的金融の情報生産機能に関する実証研究が最近多数現われた。開銀については、現在の争点は政策目的自体にあると考えられる。中小企業金融については、非対称情報のある貸出市場の理論分析とより結びついて、手段の選択にまで視野を広げた実証分析がおこなわれることが望まれる。