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論文要旨

Vol. 51, No. 1, pp. 40-53 (2000)

『地方銀行のガバナンス―地方銀行の経営に対する都市銀行の影響を中心に―』
粕谷 宗久 (日本銀行調査統計局), 武田 浩一 (京都大学経済研究所/日本学術振興会)

メインバンク制のような銀行による企業のガバナンスについては、最近の研究でそのメカニズムが明らかになってきている。その一方で、銀行自身に関するガバナンスについては、必ずしも十分な研究が行われてきたとはいえない。この研究で、我々は、地方銀行の経営に対する都市銀行の影響について、純粋な外部株主としての立場に加えて、人材派遣等のより密接な日本的系列関係、また逆に業務提携といったビジネスライクな関係にも着目し、その関係を実証的に明らかにすることを試みる。実証結果によれば純粋な外部株主としての都市銀行との関係からは、地方銀行の経営効率への影響は認められない。都市銀行との日本的系列関係の影響も認められず、地方銀行が都市銀行を中心とした系列関係によるコントロールから独立して経営されていた可能性が明らかになった。一方、生産要素を相互に補完し合う業務提携の関係は、実証データ上の問題もあり明白には検出されなかった。