6.銀行主導型システムからの脱却−−むすび

 

 年金基金をベースとする強制貯蓄動員機構と、政府系銀行および国営ユニット・トラストをベースとする自発的貯蓄動員機構との相互補完的システムは、明らかに限界に達している。貯蓄基盤の確立と社会的安定という二重の目的を同時に実現する手段として慎重に構築されてきたマレーシアの金融システムは、金融グローバル化と経済成長それ自体によって、もはや環境に適合できないものとなりつつある。政府の保護のもとに置かれてきた銀行部門の自立と機能強化、資本市場を通じた長期資金動員システムの確立は、金融制度構築の上で最優先課題である。

 年金基金とユニット・トラストを含むファンド・マネージメント産業の成長は、資本市場を経由する長期資金動員の手段として重要であるだけではない。これらの機関が機関投資家として合理的な行動をとることが、証券市場の厚みを増し資本市場の機能を高め、資金調達と運用の両面で銀行部門との競争を促進する条件となるであろう。現時点では、規模において最大の機関投資家はEPFを核とする国営社会保障ファンドであり、ファンド・マネージメント産業の核はいまだに国営ユニット・トラストである。これらの金融機関が機関投資家へ変貌することが、銀行主導型システムから脱却し、かつ、対外開放に耐えうる金融システムを整備する上で不可欠の条件の一つである。