付 録
国民所得推計(生産勘定)の新手法と旧手法比較
以下の出所は、GOP,
National Accounts of Pakistan
, 各年版 (特に1988/89年度版)である。
I. 新 手 法
I.1. 農林水産業(Agriculture)
産出額と中間投入額の両方を推定する生産アプローチによる推計
I.1.1. 耕種(主要作物)部門 (Major Crops)
主要作物=米(Rice)、小麦(Wheat)、大麦(Barley)、ソルガム(Jowar)、トウジンビエ(Bajra)、メイズ(Maize)、ヒヨコマメ(Gram)、菜種(Rape & Mustard)、ゴマ(Sesamum)、綿花(Cotton)、サトウキビ(Sugarcane)、タバコ(Tobacco)
各作物の主産物産出額=作付面積*単収推計値*収穫時価格
各作物の副産物産出額=作付面積*主産物単収推計値*毎年の副産物産出係数*副産物の収穫時価格
合計の中間投入額=各作物の種子費合計+(化学肥料費+殺虫剤・除草剤の農薬費+水利費+耕起・砕土・播種費)*主要作物産出額の作物産出額への比率
各作物の種子投入額=作付面積*種子密度係数*種子価格
化学肥料、農薬の投入額=農民への販売量*農民への販売価格
水利費=用水路灌漑供水量推計*基準年価格*価格指数+管井戸灌漑供水量推計*基準年価格*価格指数
耕起・砕土・播種費=作付面積*単位面積当たりの耕起・砕土・播種費の基準年推計値*燃料の卸売指数
I.1.2. 耕種(副次作物)部門 (Minor Crops)
副次作物=主要作物以外の全作物(豆類、野菜、果物、調味料、油糧作物、繊維作物、飼料作物)
各作物の産出額=作付面積*単収推計値*卸売価格*0.80、ただし0.80は卸売価格を収穫時価格に関する係数
I.1.3. 畜産部門 (Livestock)
品目=畜産品:ミルク(Milk、牛、水牛、山羊・羊)、肉類(Meat、牛、羊、鶏)、卵(Eggs)、獣脂(Animal Fats)、皮革(Hides、Skins、Lamb skins、Kid skins、Fancy skins)、羊毛(Wool)、獣毛(Hair)、ガット類(Guts/laising)、獣骨(Bones)、獣血(Blood)、食用内臓(Edible offals)、獣頭類(Heads & trotters)、角(Horns & hooves)、禽類(Fowls/birds)、鶏・鵞鳥(Chicken/ducklings)、牛糞・その他(Dung & others);畜役サービス
畜役以外の各品目産出額=家畜センサスでの生産量推計値*センサス間伸び率係数*卸売価格*0.80、ただし0.80は卸売価格を収穫時価格に関する係数
畜役サービス産出額=家畜センサスでの役畜数推計*センサス間伸び率係数*畜役サービス係数*価格指数
産出額については実質値が先に決定され、そこから名目値が事後的に計算される
畜産部門中間投入額=[基準年次の各飼料の畜産部門で使われる比率*各飼料の産出額] の総和
I.1.4. 水産業 (Fishing)
産出額=各年の生産量推計*基準年の単価*価格指数
中間投入額=機械化部門の推計値より推計した中間投入量推計*基準年の単価*価格指数
実質値が先に決定され、そこから名目値が事後的に計算
I.1.5. 林業 (Forestry)
付加価値=産出額=基準年推計値*(木材・燃料材・その他森林産出材のウェイトつき生産量指数)
基準年推計値=(製造業センサスCMI、小規模・家内工業調査SSHMIでの木材利用量推計)+(家計支出調査HIESによる家庭の燃料材消費量推計)
実質値が先に決定され、そこから名目値が事後的に計算
I.2. 鉱業 (Mining & Quarrying)
産出額と中間投入額の両方を推定する生産アプローチによる推計
実質付加価値=実質産出額*0.80、ただし0.80は1980/81の鉱業センサスに基づく付加価値率
各鉱業品の実質産出額は各年の生産量推計にもとづく
I.3. 製造業 (Manufacturing)
産出額と中間投入額の両方を推定する生産アプローチによる推計
I.3.1. 大規模製造業 (Large-Scale Manufacturing)
大規模部門=1934年の工場法による登録企業=(燃料を用いかつ年間の少なくとも1日以上で20人以上を雇用していた企業)および(燃料の使用にかかわらず毎月の少なくとも1日以上で10人以上を雇用していた企業)
実質付加価値=(1980/81基準年時の付加価値)*(製造業産出指数:QIM)
QIM=(主要品目の産出指数:QIMi)*(1980/81基準年時のウェイト)の品目総和
名目付加価値=(1980/81基準年時の付加価値)*[(QIMi)*(1980/81基準年時のウェイト)*(各品目の卸売指数)の品目総和]
QIMiは、106(1987/88以降は96)品目につき、製造業センサスCMIなどを参考に1980/81年のベンチマークを作成、その後毎年代表的生産品の生産量調査を実施して各品目のQIMiを推計。1987/88年時で106品目は登録部門生産量の81%をカバー
I.3.2. 小規模製造業 (Small-Scale Manufacturing)
小規模部門=大規模部門以外のすべて
実質付加価値=(1983/84小規模・家内工業調査SSHMIにもとづく1980/81ベンチマーク付加価値)*(8.4% 成長率)、ただし8.4%は1976/77SSHMIと1983/84SSHMIの間の実質成長率
実質値が先に決定され、そこから名目値が事後的に計算
I.4. 建設業 (Construction)
支出アプローチ:付加価値=(各部門での投資額推計値*建設部門付加価値係数)の各部門の総和
名目付加価値から実質付加価値には建設労働者賃金指数を使用
I.5. 電気・ガス (Electricty & Gas)
生産アプローチ:各公企業の名目付加価値=供給量*販売価格−中間投入額
I.6. 運輸・貯蔵・通信 (Transport, Storage & Communication)
所得アプローチ:各サブセクターの名目付加価値=雇用者への賃金+営業余剰
登録企業部門については各年の報告値、非登録部門(リキシャなど)については連邦統計局と地方自治体が実施したベンチマーク調査を利用
I.7. 卸売・小売 (Wholesale & Retail Trade)
生産アプローチ:各商品の名目付加価値=各商品の産出額*市場化率*マークアップ率
市場化率とマークアップ率は各商品範疇毎に基準年次について推計
中間投入額は無視
商品分類の大範疇は農産品(22)、製造業品(2)、輸入品(4)で、かっこ内が小範疇の数
I.8. 金融・保険 (Banking & Insurance)
所得アプローチ:各構成企業の名目付加価値=雇用者への賃金+営業余剰
I.9. 住居 (Ownership of Dwellings)
生産アプローチ:名目付加価値=名目家賃*住居数推計*0.766、ただし0.766は修繕費用を抜いた付加価値率
名目家賃の推定:都市部では毎月の標本調査、農村部は都市部の定数倍で定数は最新の家計支出調査HIESにもとづく
住居数の推計:住居センサスをベンチマークに一定比率で外捜
I.10. 行政・国防 (Public Administration & Defense)
所得アプローチ:名目付加価値=基準年次の各行政機関の賃金合計*1.10*1.05
実質付加価値=基準年次の各行政機関の賃金合計*1.10*1.05*(伸び率見込みprojection factor)
ただし1.10は官舎家賃が過少であることの修正、1.05は純付加価値を粗付加価値に変換する定数
I.11. その他サービス (Community, Social & Personel Services)
所得アプローチ:実質付加価値=[各サブセクターでの基準年次実質付加価値推計*(各サブセクターの伸び率推定)]の総和
各サブセクターでの基準年次実質付加価値=国勢調査による労働者数推計*標本調査による一人当たり付加価値*1.15、ただし1.15は過小推計に対する修正
サブセクター=教育、医療、会計、法律、写真、広告、ホテル、洗濯、理容、家内使用人、娯楽、その他
サブセクターのレベルでは実質値が先に決定され、そこから名目値が事後的に計算
II. 旧 手 法 (新手法との明確な違いのみ列挙)
II.1. 農林水産業(Agriculture)
II.1.1. 耕種(主要作物)部門 (Major Crops)
過小推計の修正として一括4%の底上げを各作物の産出額推計値に施す
単収の推計で坪刈は使われず
藁などの副産物の産出額を完全に無視
中間投入額に役畜による耕起・砕土・播種費は含まれない
II.1.2. 耕種(副次作物)部門 (Minor Crops)
過小推計の修正として一括4%の底上げを各作物の産出額推計値に施す
中間投入額に役畜による耕起・砕土・播種費は含まれない
青刈飼料作物の産出額は計上されない
II.1.3. 畜産部門 (Livestock)
品目=ミルク(Milk、牛、水牛、山羊・羊)、肉類(Meat、牛、羊、鶏)、獣脂(Animal Fats)、皮革(Hides)、皮革(Skins)、羊毛(Wool)、獣毛(Hair)、食用内臓(Edible offals)、禽類(Fowls/birds)、鶏・鵞鳥(Chicken/ducklings)、卵(Eggs)、牛糞(Dung)、その他(Others)
役畜サービスは産出額に計上されない
産出額=付加価値、と想定し、各種飼料作物や濃厚飼料の付加価値を農業の耕種部門や食品加工製造業に含めない。畜産物の生産のための投入財はすべて農業部門内でまかなわれていると想定
II.1.4. 水産業 (Fishing)
名目付加価値=各年の産出量推計*各年の卸売価格*0.80*0.97、ただし0.80は水産業者庭先価格への換算係数、0.97は投入財費用を抜いた付加価値率
II.1.5. 林業 (Forestry)
名目付加価値=各年の公有林産出量*1.30*0.97、ただし1.30は民間林業の未報告部分の修正、0.97は投入財費用を抜いた付加価値率
II.2. 鉱業 (Mining & Quarrying)
実質付加価値=実質産出額*0.83、ただし17%が投入財費用
各鉱業品の実質産出額=各年の生産量推計*(1959/60基準価格)
II.3. 製造業 (Manufacturing)
II.3.1. 大規模製造業 (Large-Scale Manufacturing)
実質付加価値=(1959/60基準年時の付加価値)*(製造業産出指数:QIM)
QIM=(主要品目の産出指数:QIMi)*(各基準年時のウェイト)の品目総和。ただしQIMiの基準年時は順次改定されており、1964/65、69/70、75/76、80/81にそれぞれ修正
名目付加価値=(1959/60基準年時の付加価値)*[(QIMi)*(1959/60基準年時のウェイト)*(各品目の卸売指数)の品目総和]
II.3.2. 小規模製造業 (Small-Scale Manufacturing)
実質付加価値=(その時点で最新の小規模・家内工業調査SSHMIにもとづくベンチマーク付加価値)*(その時点で最新の付加価値伸び率推定値)
付加価値伸び率推定値は、最初の伸び率が人口成長率の3.0%、次が1969/70SSHMIから7.3%、1983/84SSHMIから8.3%が使われている
II.4. 建設業 (Construction)
生産アプローチ
都市部実質付加価値=実質産出量*0.40=(セメント消費量*10*基準年時価格)**0.40
農村部実質付加価値=実質産出量*0.50=(家計支出調査HIESでの家賃の基準年時推計額/0.08)*0.50*都市部実質付加価値伸び率係数
II.5. 電気・ガス (Electricty & Gas)
ごくマイナーな変化のみ
II.6. 運輸・貯蔵・通信 (Transport, Storage & Communication)
ごくマイナーな変化のみ
II.7. 卸売・小売 (Wholesale & Retail Trade)
各商品の名目付加価値=各商品の産出額*市場化率*マークアップ率*0.95
市場化率とマークアップ率は各商品範疇毎に基準年次について推計。
中間投入額は産出額の5%と想定
商品分類の大範疇は農産品(7)、製造業品(2)、輸入品(1)で、かっこ内が小範疇の数。輸入品についての新手法との違いは、輸入消費財のみがこのセクターの取り扱う商品で、輸入資本財と原材料は政府部門及び製造業が直接購入するためにマージンによる付加価値が生じないと想定している点。
II.8. 銀行・金融 (Banking & Insurance)
変化なし
II.9. 住居 (Ownership of Dwellings)
名目付加価値=名目家賃*住居数推計*0.90、ただし10%は修繕費用
名目家賃の推定=最新の家計支出調査HIES
住居数の推計=1960年住居センサスによるベンチマークを外捜
II.10. 行政・国防 (Public Administration & Defense)
マイナーな変化のみ
II.11. その他サービス (Community, Social & Personel Services)
実質付加価値=基準年次実質付加価値*(定率成長率の係数)
各サブセクターでの基準年次実質付加価値=国勢調査による労働者数推計*標本調査による一人当たり付加価値、ただしサブセクターによっては支出アプローチも併用
定率成長率は1977/78から5.74%、1980/81から6.6%