日本語English
Research Center for Price Dynamics
「ミクロ取引データに基づく物価・家計行動の分析」
HOME

スキャナーデータのさらなる追求:家計と物価

研究の特色

学術的な特色・意義

マクロ経済学における物価変動の研究では集計指標(消費者物価指数など)を用いた経験科学的な手法が採られてきた。そのため、物価決定の構造に関する分析が不十分であり、相対価格変化の物価への影響についても十分な検討がなされていない。一方、産業組織論の分野ではミクロレベルでの企業の価格設定行動についての研究の蓄積があるが、そこでの関心は個別企業や各産業にとどまっており、それが経済全体の価格である物価とどう関係するかは分析の対象外であった。

本研究プロジェクトの特徴は、これまで十分な注意が払われてこなかったミクロとマクロの相互依存関係に着目し、その分析を通じて物価プロセスの変容を解明するところにある。物価に関するミクロとマクロの接合の試みとしては90年代後半以降、米国を中心にミクロ理論とマクロ事象を統合する、いわゆるニューケインジアンによる研究があるが、ミクロの実証研究者とマクロ研究者が統一的な研究課題の下で分析を進めるという本研究のような研究組織は世界に類をみないものである。

国際的な位置づけ

物価変動ダイナミクスの正確な理解は政策運営の基本であり、それなくして国民経済の安定化は実現できない。こうした認識は先進各国に広まっており、1980年代以降観察されている物価現象を整理し直し新しい環境の下での物価変動ダイナミクスを解明する動きが始まっている。ECB(欧州中央銀行)を中心とした、ユーロエリア各国の研究者と中央銀行関係者との研究ネットワークが大規模な活動を展開しているほか、その他の地域でも同様の試みがある。

本研究プロジェクトでは、学界と政府・中央銀行をつなぐ広範囲なネットワークをわが国において形成し、海外ネットワークとの協調を図っていく。日本の物価変動ダイナミクスを解明することは、経験知の乏しいデフレについて可能な限り理解を深めたいという国際的な要請に沿うものであり、この分野における国際的な研究活動の中で日本が積極的に担うべき役割であると考える。

研究プロジェクトの成果

ミクロとマクロの統合という独自の視点にもとづき、物価プロセスの変容について新たな知見を獲得し発信する。また、ユーロエリアなどと共同で物価プロセスのグローバルネットワークの構築に寄与する。さらに、物価統計の作成や金融政策の運営について学術的な立場から斬新な提言を行う。

Google