日本経済新聞紹介記事/2002年9月28日「発信源」欄

世界的年金論争で報告
−スウェーデン方式に注目−


 


 

   賦課方式か積立方式か――。公的年金の設計を巡り世界的に展開されている論争で、高山憲之一橋大教授らのグループがこのほど調査報告をまとめた。

  現役世代が高齢者を養う賦課方式の年金は、日本に限らず海外でも行き詰まりが指摘されてきた。このため1994年に世界銀行が積立方式による新制度を提唱。どちらが有益か学者や国際機関による論争が起きていたが、報告によると、経済的側面から見る限り積立方式も旧来の賦課方式と本質的に変わらないという国際的認識ができてきたという。積み立てた保険料の運用も結局、人口や経済状況に制約されるほか、新制度移行のさい、現役世代が自らの積立分と先輩世代への給付分を二重に負担する問題があるからだ。

  このため制度設計の焦点は、経済的側面より国民への説明しやすさなど政治的側面に移り始めている、という。そこで報告が注目しているのが、しくみは賦課方式だが、保険料と給付額が連動し、納めた分は自分で受け取れる点で積立方式に似た「スウェーデン方式」だ。同制度にも欠点はあるが、「見直しの手順も含めてルール化されている点が、場当たり的に制度を変える日本の現行システムより国民の信頼を得やすい」(高山教授)。

 今月、厚生労働省が発表した勤労者世帯の意識調査によると、年金制度の在り方に60代以上の約80%が賛成なのに対し、20代以下では40%強が反対。世代間対立が鮮明になる中で、この分野の研究への注目度は増している。


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