日本経済新聞紹介記事/2002年4月8日「発信源」欄

経済学で「大型研究」
−政策提言の機会ふえ、活気− 


 


 

 「経済学の大型研究プロジェクト」。日本の経済学界では珍しい、現実の経済課題や政策提言に密接に結びつく大型研究が動き出した。

  東京都内で最近開いた「スウェーデンに学ぶ政治家主導の年金改革」と題するシンポジウム。スウェーデンのケンベリ元厚相を招き、年金問題に取り組む日本の国会議員も多数参加したが、同シンポジウムを企画したのが一橋大学経済研究所の高山憲之教授(55歳)らの「世代間利害調整プロジェクト」だ。年金に限らず地球温暖化など世代間で利害が異なる問題を分析する。5年がかりの計画で、各大学などから約90人の研究者が参加する。

  同プロジェクトは文部科学省の科学研究費(科研費)補助のうち大型の「特定領域研究」の対象となっている。もともと科研費のうち文系の比率は1〜2割。その文系の中でも大型研究プロジェクトは社会学や政治学の分野が多く、経済学は90年代、ほぼゼロだった。高山教授は「研究成果は海外にも積極的に発信する。少子高齢化が急速に進む日本は貴重な研究対象であり、もっと学術的に紹介してよい」と意気込む。

  景気の長期低迷で経済学への期待が高まり、研究が政策提言に直結する機会が増えているのが背景だ。また、経済学はノーベル賞のうち日本人が唯一、受賞していない分野だが、世界に通用する研究が生まれる芽になるかもしれない。


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