研究計画概要

2009年5月30日

研究トピックの題名

日本企業20万社のネットワーク構造の形成と企業成長の解明

論文執筆予定者

  氏名 所属
研究分担者 高安 美佐子 東京工業大学大学院総合理工学研究科 准教授
本グループの研究協力者 渡辺 努 一橋大学経済研究所 教授 (本事業研究代表者)
高安 秀樹 ソニーコンピュータサイエンス研究所 シニアリサーチャー
大西 立顕 キヤノン グローバル戦略研究所 研究員
渡邊 隼史 東京工業大学大学院総合理工学研究科 博士1年
日本学術振興会特別研究員 DC1
大家 義登 東京工業大学大学院総合理工学研究科 修士2年
三浦 航 東京工業大学大学院総合理工学研究科 修士1年

(以上全員、論文執筆メンバーです。)

作業担当予定者

氏名 所属
高安 美佐子 東京工業大学大学院総合理工学研究科 准教授
三浦 航 東京工業大学大学院総合理工学研究科 修士1年
大家 義登 東京工業大学大学院総合理工学研究科 修士2年
渡邊 隼史 東京工業大学大学院総合理工学研究科 博士1年
日本学術振興会特別研究員 DC 1
大西 立顕 キヤノン グローバル戦略 研究所 研究員

計画概要

本研究では、日本企業のネットワークの特性を解明するとともに、ネットワークの堅牢性を定量化する手法を提案し、企業ネットワーク形成の基本モデルを構築する。また、構築されたモデルを用いてシミュレーションを行うことにより、ある企業で起こった危機がどのように伝播し、他の企業に影響を及ぼすのか、などの経済危機とその余波の経済効果が推定可能となる。さらに、このモデルを拡張し、企業ネットワーク形成にどのようなルールを付加するとネットワーク構造がより堅牢になるのかなど、提言できる成果をめざす。
研究計画は大きく分けて以下の4つの構成からなる。

1.TDB企業データに見られる企業属性とそれらの統計的性質の解明

 企業の所得および成長率に観測される統計分布は、国境を越えて様々な国で高い普遍性を持つことが知られている。そこでまず、今回のTDBのデータから網羅的に様々な属性を観測し、所得、従業員数、成長率、起業、合併、倒産などに関する統計的特性を多角的に抽出する。この研究は、TDBのデータベースを利用した今後の企業モデル構築の研究の礎となる重要な作業である。この研究では、企業のもつ普遍的な性質を抽出するために多年度(20年程度)の企業データ(COSMOS2、Entry、合併、倒産)が必要になる。
(高安・渡邊(隼)・大家・三浦・大西・高安(秀)・渡辺)

2.TDB企業データの取引関係に見られるネットワーク構造の解明

ネットワークの取引データから、そのネットワーク構造の解析を進める。ネットワーク構造を特徴付ける既存研究の解析手法を適応し、ネットワークの特徴を網羅的に抽出する。これらの既存手法が、ネットワークの複雑性や堅牢性を定量化する指標としてどの程度妥当なのか、企業データならではの属性や財務データなどを用いて多角的に検討する。また、既存手法で表現できないような企業ネットワークの特徴が鮮明化する定量化手法を構築していく。(高安・大家・三浦・大西・高安(秀)・渡辺)

3.企業の所得の分布と成長率の分布を再現するミニマルモデルの開発

研究計画1で観測された主な性質を再現するための最も単純なミニマルな数理モデルを構築する。まずは、複雑な企業の取引ネットワーク構造を考慮せず、企業間相互作用もない場合の企業成長モデルで、企業所得、従業員数、起業、合併、倒産および成長率などに観測された普遍的性質の再現がどのくらい可能か理論的に考察する。この研究は、企業におけるネットワーク構造の効果を考察する上で非常に重要な比較対象となる研究である。ネットワークを仮定しなくても導かれる性質とネットワークを仮定しないと導かれない性質を明確化する。このモデルでは、1企業の所得などの成長時系列を直接モデル化するため、1件あたりの企業の所得に関してできるだけ長期間観測したデータが必要である(数千から数万社程度、観測期間50年間程度が理想です)。
(高安・渡邊(隼)・大西・高安(秀)・渡辺)

4.企業ネットワークの成長モデルの開発

 3のモデル開発で得られなかった企業の性質を再現するために、企業間の相互作用を導入し、ネットワーク構造を持つようにモデルを拡張する。このモデルに拡張するときに重要となるのは、どのように企業同士が取引をして発展・衰退していくかを記述することである。企業の起業、倒産などのデータを十分に活用し、モデルを構築する。ここで、構築されたモデルは、研究計画1、2の大部分の普遍的性質を満たすモデルであること、かつ、導入するパラメータが最小限で複雑すぎないことが望まれる。また、昨今の金融危機が進行中の複数年度のネットワークデータであるため、連鎖倒産に絡んだ現象の事例が沢山含まれており、不景気がどのように日本企業に伝播していったのかなど、因果関係を可視化する予定である。モデル開発がある程度進んだ段階で、予測や制御に関わるシミュレーションなども並列で行う予定である。(高安・三浦・大西・高安(秀)・渡辺)

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