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論文要旨

Vol. 70, No. 3, pp. 177-199 (2019)

『労働者保護とM&Aのパフォーマンス --国際比較分析--』
岩崎 康大 (東京工業大学), 池田 直史 (東京工業大学), 井上 光太郎 (東京工業大学)

本稿では,M&Aのターゲット企業の所在国の法制度によって労働者の権利が強く保護されていると,M&A後の円滑な組織や事業の最適化のためのリストラクチャリングが困難になり,M&A発表時の株価効果とM&A後の業績が相対的に低下するとの仮説を検証している.本稿では,雇用調整の困難度に関する複数の指標を用い,ターゲット企業選択に関するセレクションバイアスを考慮した分析を行い,ターゲット企業の所在国の労働者保護が強いほどM&A発表時の株価リターン及び買収後の短期間の業績が相対的に悪いことを確認した.この結果は,各国における労働者保護に関する法制度の在り方が,M&A後の組織最適化行動への影響を通してターゲット企業の選択と価値創造の両方に影響を与えることを示す.