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論文要旨

Vol. 70, No. 2, pp. 81-95 (2019)

『補正予算とシーリング』
寺井 公子 (慶應義塾大学経済学部)

本論文では,予算編成過程を描写するためのプリンシパル・エージェントモデルを構築する.プリンシパルである財政当局が,エージェントである支出官庁に支出を委任するために,1期に当初予算,2期に補正予算を配分する.支出官庁は1期に,当初予算をより効果的に使用するための努力を行う.均衡では,支出官庁は社会的最適解に比べて低い努力水準を選択し,その後で意思決定を行う財政当局に多大な補正予算を選択させる.それを見越して,財政当局は当初予算を低く設定する.次に,当初予算と補正予算の両方にシーリングをかけた場合の効果を考察する.補正予算へのシーリングは,支出官庁に当初予算を効率的に使用するよう促すインセンティブとなる.一方で,経済の状況に応じた機動的な支出を妨げることを恐れて,補正予算には寛大なシーリングが設定される.シーリングを課すことが望ましいかどうかは,当初予算の硬直性による.