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論文要旨

Vol. 70, No. 2, pp. 113-145 (2019)

『日本におけるカロリー価格指数と栄養素価格指数の長期的推計』
稲倉 典子 (大阪大学および大阪産業大学), 阿部 修人 (一橋大学経済研究所), 井深 陽子 (慶應義塾大学経済学部), 森口 千晶 (一橋大学経済研究所)

肥満は「二十一世紀のエピデミック」とも呼ばれ,世界各国で増加傾向にある.その理由として様々な要因が挙げられているが,経済学では特に価格効果,すなわち食品価格がBMI (Body Mass Index)に与える影響に関する研究が進んでいる.本論文では,日本人のBMIが先進国のなかでは例外的に低水準に留まっていることに着目し,日本における食品価格の動向が北米先進国とは異なる可能性について考察を加える.ただし,食品は国によって種類が異なるため,食品価格の国際比較は容易ではない.本論文の革新性は,食品レベルではなく,食品に含まれるエネルギー(カロリー)および栄養素レベルの価格指数を推計し,初めてその長期的趨勢を明らかにする点にある.推計結果によると,日本においては1975年から2015年までの40年間に,エネルギー1カロリーの実質価格が低下し,食物繊維に対する脂質の相対価格も大きく低下している.また,都道府県パネルデータを用いた固定効果分析によると,児童の肥満度と栄養素価格との間に有意な相関関係が見出された.