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論文要旨

Vol. 70, No. 1, pp. 30-53 (2019)

『ロシア地域出生率の動態と決定要因 --動学的パネルデータ分析--』
岩﨑 一郎 (一橋大学経済研究所), 雲 和広 (一橋大学経済研究所)

本稿の目的は,2005~2015年を観察期間とする,ロシア連邦構成主体のパネルデータを用いて,地域出生率の決定要因を実証的に検証することである.システム一般積率化推定量を用いた状態依存動学モデルの推定結果は,分析対象地域の経済成長,潜在的雇用機会,地元企業の良好な経営状態,教育機会,社会資本の質及び住宅供給の6要因は,当該地域の出生率を押し上げる効果を持つ一方,スラブ民族のプレゼンス,人口流入,貧困及び環境リスクの4要因は,対象地域の出生率を抑制する方向に作用する可能性を強く示唆した.更に,本稿の推定結果は,ロシア女性の出産行動に強く影響する諸因子の組み合わせは,異なる年齢間や地域間で大きく相違する事実も明らかにした.ロシアの少子化傾向を効果的に抑制するためには,年齢層や地域の異質性に配慮したきめ細かい政策の立案と実施が求められる.