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論文要旨

Vol. 69, No. 2, pp. 97-114 (2018)

『第1回国勢調査と日本の統計学 --亀田豊治朗による抽出結果の学説史的意義--』
上藤 一郎 (静岡大学学術院人文社会科学領域)

本稿の目的は,亀田豊治朗が試みた第1回国勢調査の抽出集計を通じて日本における「統計学の数学化」を検証することである.「統計学の数学化」とは本来国家科学や社会科学として構想されていた統計学が次第に数理科学へと変貌を遂げる過程を指して筆者が定義した概念であるが,1920年前後から「統計学の数学化」を示すさまざまな試みが国際的に顕在化し始めていた.日本においてそれを最も初期に示したのが亀田による個票の抽出集計である.そこで本稿では,標本抽出理論を当該抽出集計に応用し得た背景や「統計学の数学化」をめぐる国際的な研究動向を俯瞰した上で,亀田の抽出理論とそれに基づく抽出集計の意義について評価を試みる.