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論文要旨

Vol. 69, No. 2, pp. 129-144 (2018)

『戦前と戦後の失業に関する統計調査 --標本の抽出と失業の把握に焦点を当てて--』
山口 幸三 (京都大学大学院農学研究科)

本稿の目的は,標本の抽出と失業の把握に焦点を当てて,戦前の失業に関する統計調査について明らかにし,戦後の失業に関する統計調査との継続性や戦後の調査への影響について考察することである.戦後の労働力調査では,戦前の失業統計調査と比べて,標本の抽出方法や失業状態の判定方法において,大きな転換がなされた.また,戦前と戦後の大きな違いは,統計調査を継続的に実施し,失業統計のための様々な検討ができる環境が整っていたかどうかにあったと考えられる.一方で,戦前に標本抽出理論を適用した抽出集計を行っており,戦後の国勢調査の1%抽出速報結果は,それを倣っていると考えられる.戦前の失業状態の判定方法や潜在失業者等の把握への問題意識は,戦後の労働力調査臨時調査,就業構造基本調査へと継承されていると推測される.