本論文の目的は,アマルティア・センが提唱した潜在能力アプローチを医療サービスの測定と評価に適用すること,より具体的には,看護ケアサービスに関する実証的研究をもとに,潜在能力アプローチの操作的な適用方法を検討することにある.定式化のポイントは,①看護サービスにより,「生の技法」と「社会サービスの利用」という2つの機能がどのくらい達成されたか,に関する患者自身の評価を情報的基礎として,②同様の利用能力をもつ患者グループを特定し,③グループごとに彼らが共通に享受する潜在能力集合のフロンティアを推定することに置かれる. このように推定された潜在能力集合のフロンティアは,個々人が各々の評価関数にしたがって,最適な機能ベクトルを選択できる実質的な機会の範囲を表すと解釈される.