HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 68, No. 4, pp. 303-323 (2017)

『なぜ就業継続率は上がったのか --ワーク・ライフ・バランス施策は少子化対策として有効か--』
阿部 正浩 (中央大学経済学部), 児玉 直美 (一橋大学経済学研究科), 齋藤 隆志 (明治学院大学経済学部)

本稿では,2006年と2014年の企業データを使って,WLB施策と女性の出産,育児休業からの復帰,就業継続,企業の女性比率,女性管理職比率の関係性について検証した.WLB施策利用の促進は総じて女性の出産・就業継続・女性活用にプラスに働くが,効果は一律ではない.存分に働くための支援,労働時間短縮配慮は,出産,就業継続,女性比率,女性管理職比率と概ね正の相関がある.一方,子育て支援やフレキシブルな働き方は出産,就業継続には正の効果があるが,女性比率,女性管理職比率にはほとんど影響がない.この2つの施策は,少子化対策としては有効であるかもしれないが,女性活用を高める方向には働いていない.法律によって義務付けられなくても企業が自発的に子育て,女性活用を支援する企業風土は,少子化対策や女性活用を促す効果を持っている.また,今回の分析では,就業継続や女性比率と企業業績の間には相関は確認されなかった.このことは,企業が女性の就業継続や女性活用を進めることは,少なくとも企業業績に悪い影響は与えないということを示唆する.