我々の社会を支えている「市場」や「民主制」では,将来世代が今存在しないために,彼らが市場で声を上げられないし,投票もできない.そのため,本稿では,将来世代を取り込む幾つかの研究を展望する.まず,生存しているすべての人々に選挙権を与え,ある年齢以下の人々にはその親が代理投票するという制度(ドメイン投票)のパフォーマンスを検討する.ドメイン投票実験では,親は必ずしも子のために投票しないし,子を持たない大人でこれまで若い世代のために投票した人々が必ずしも若い世代にために投票しないという経路を通じてその効果が弱まる.一方で,現世代が仮想将来世代となる環境を実験室で作ると,仮想将来世代を含むグループは持続可能な選択をする傾向が強い.実践では,将来の政策を考える際,現世代は,目先の問題の解決に思考が縛られるという「課題解決型」であるのに対し,仮想将来世代は,目先の問題から開放され,自由な発想の元で政策を提案するという「長所伸長型」であった.