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論文要旨

Vol. 68, No. 1, pp. 15-32 (2017)

『世界恐慌期の政策対応と期待形成 --1930年代初頭の日本の経験--』
庄司 俊章 (東京大学大学院経済学研究科博士課程)

世界恐慌からの脱出を図るため,1930年代初頭の日本では様々な政策が立て続けに実行された.本稿では月次・日次の国債金利を利用し,ネルソン=シーゲルモデルに基づくイールドカーブ・フォワードレートカーブ分析,およびイベントスタディを行い,これらの政策が名目金利期待ならびにインフレ期待に与えた影響を検討した.その結果,次のような発見があった.第1に,日本銀行による国債引受に関する一連の予告・報道・実施はいずれもインフレ期待につながらず,予告時にはむしろ名目金利の低下が観察された.第2に,1931年9月の英国の金本位制離脱が契機となり,市場が日本の金本位制離脱とその後の円安を予想したことで大きな金利上昇期待につながった.第3に,財政出動が決定された時点では,金利上昇期待が観察された.ただし,その効果は金本位制離脱に比して小さなものであり,必ずしも頑健でない.