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論文要旨

Vol. 67, No. 4, pp. 339-353 (2016)

『体制転換と環境改革 --中東欧研究を中心とする体系的レビュー--』
徳永 昌弘 (関西大学商学部)

東欧革命後の中東欧諸国において,市場経済への移行(経済改革)及び政治の民主化(政治改革)と並んで,環境破壊・汚染の改善や実効性を伴う環境政策の構築(環境改革)も重要な政策課題であった.この点を踏まえて,本稿は中東欧諸国の体制転換と環境改革に関する諸問題を検討した先行研究の体系的レビューを通じて,その知見の全体像の描写を試みた.その結果,いくつかの研究上の基本属性(研究対象地域,研究トピックス,著者の所属先,同専門領域,著者数,掲載書誌の学問分野)が,環境改革に対する各々の評価に影響を及ぼしていることが判明した.さらに,執筆者の規範的価値判断として示された市場原理理解とEU支援・加盟効果に対する主観的評価も,中東欧諸国の環境改革に対する認識を大きく左右する可能性があることが示された.また,2004年及び2007年にEU加盟を果たした中東欧諸国は移行国という独自色を喪失し,EU内の後背地として認識される傾向が出てきた一方で,移行期特有の環境改革に取り組んできた研究者・実務家の関心はEU未加盟の南東欧諸国に移りつつあり,中東欧の新規加盟国と比較考量するスタイルが現れている.