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論文要旨

Vol. 66, No. 4, pp. 321-336 (2015)

『消費税率改定時の家計購買行動』
阿部 修人 (一橋大学経済研究所), 稲倉 典子 (大阪産業大学経済学部)

2014年4月の消費税率の改定は, 駆け込み需要やその反動といった非常に大きな影響を家計購買行動にもたらしたが, この変動を名目と実質でみた場合, 4月以降に両者の間に顕著な乖離が生じている. 公式CPIを実質化に用いる場合, 同一商品の価格は個人間で同一と仮定されるため, 増税により生じた価格の上昇分と, その影響の個人間での相違は限定的となる. 本稿では個人の購買履歴を記録したスキャンデータに基づき, 個人間で商品価格が異なることを許容した個人別価格変化率を作成し, 税率改定時の個人間異質性の有無を検証した. その結果, 価格変化率に顕著な相異が個人間で生じており, 消費税率改定といった大きなイベント時には, 個人間で購入価格が同一であるという仮定は極めて制約が強く, 問題があることが示唆された.