HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 66, No. 4, pp. 301-320 (2015)

『開発途上国における零細企業家の経営とインフォーマリティ―インド・デリー市の事例より―』
黒崎 卓 (一橋大学経済研究所)

開発途上国の都市インフォーマルセクターにおける零細企業家に関する事例研究として, インド・デリー市にて筆者らが収集した一次調査データを分析した. 製造業・サービス業両者を含む506の調査企業中, 46%の政府未登録企業をインフォーマリティの強い企業とみなし, これらと登録企業との間に企業家の特徴, 企業属性・パフォーマンス等にどのような違いがあるかを描写的に分析した. 既存研究同様, 未登録企業の方が企業家の教育水準が低く, 企業規模も小さい. しかし利益率に関しては登録企業よりも高い面があり, その背後には, 設備投資での困難をプロセスやマーケティング面での革新や親族の自己資産などで補い, 警察や行政等にうまく対応する能力がうかがわれた. デリーの零細・小規模企業は, 登録・未登録それぞれが独自の優位性をうまく生かして共存している.