本稿の目的は, 企業が保有する資産の, 担保としての価値の減少が, 当該企業のdebt capacityを小さくする結果, 金融機関からの借入を難しくする, という所謂「担保チャンネル」が存在するか否かを実証的に検討することである. 本稿の分析上の特徴は, 東日本大震災が企業の保有資産にもたらした担保価値の毀損, という企業にとって純粋に外生的なショックに注目し, 既存研究とは異なる形で担保チャンネルの存在について識別を行っている点にある. 分析の結果, 震災による有形固定資産の価値毀損が大きいほど借入が難しいことが発見された. この結果は, 担保チャンネルが存在することを示唆している.