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論文要旨

Vol. 66, No. 3, pp. 193-208 (2015)

『商業不動産価格はどのように測定すればいいのか?』
David Geltner (マサチューセッツ工科大学), 清水 千弘 (シンガポール国立大学)

20世紀に経験してきた不動産バブルの多くは,商業不動産価格の高騰と急落がきっかけであった. そのような中で,商業不動産価格指数の構築や,その経済価値の測定が求められているが,どのように測定していけばいいのであろうか. 商業不動産は,住宅なども比較して不均一性が強く,取引も少ないために,その市場の動向を捕捉することは極めて困難である. そのため,多くの経済統計の中でも,最もその測定が困難な対象であると共に,それに関連した統計整備が最も遅れてきた分野の一つであると言われている. 一方,米国に目を向けると,近年において,様々な商業不動産価格指数が,複数の民間機関から公表され始めている. その作成方法を見ると,取引価格を用いた指数,不動産鑑定評価を用いた指数,そして,金融市場に上場されているREIT(不動産投資信託)の投資口価格を用いた指数と多岐にわたっている. とりわけ鑑定価格という概念は,不動産市場特有のものであると共に,鑑定価格をベースとした価格指数に対しては,多くの批判がなされてきた. そこで,本稿は,商業不動産価格指数,つまり商業不動産の経済価値の測定方法を総括すると共に,米国の商業不動産価格指数を用いて,その性質を明らかにすることを目的とする.