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論文要旨

Vol. 65, No. 4, pp. 289-302 (2014)

『参入阻止行動を考慮したカレツキアン・モデル —マイクロファウンデーションによる新展開—』
大野 隆 (立命館大学経済学部)

本論文は,ポストケインズ派成長理論の一つであるカレツキアン・モデルに,労使交渉による価格と賃金の決定、企業の参入阻止行動といったミクロ的基礎を明示的に組み込み,安定性や様々な経済政策が経済成長率や利潤シェアに与える影響を考察する.労使交渉によるナッシュ積を最大にする効率的交渉によって導かれた価格と賃金のもと,短期に稼働率の調整と企業の参入退出行動が行われ,長期では,各企業が期待利潤率を最大にするように参入阻止行動を行うモデルを構築した.その結果,短期において,財市場の安定条件であるケインジアン条件を満たさなかったとしても,体系が安定となりうることが明らかとなった.また,長期において,独立支出の増加や企業にとって望ましい所得分配への変更が,利潤主導型成長レジームであったとしても,経済成長率に負の影響を与えるとの結論を得た.