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論文要旨

Vol. 65, No. 1, pp. 86-93 (2014)

『所得格差拡大と高齢化の再検討』
山口 雅生 (大阪経済大学経済学部)

本稿は、『全国消費実態調査』の匿名データを用いて、1989年から2004年にかけての2人以上世帯の等価所得の所得分布の変化の特徴を明らかにするとともに、世帯主が60歳未満と60歳以上の世帯の違いを考慮して、年齢構成比の変化(人口の高齢化)が所得格差の拡大にどのような影響を与えているのかについて、GI曲線とMLD要因分解によって分析するものである。分析の結果、1989年から1994年と1994年から1999年にかけて所得格差の拡大は、世帯主が60歳以上の世帯割合の増加、その中でも世帯主が非就業者の世帯割合の増加が主な要因であった。1999年から2004年にかけての所得格差の拡大は、各年齢階層内のグループ内所得格差拡大が主な要因であった。さらに世帯主が60歳未満の世帯の所得格差は、1994年以降拡大傾向にあったが、その要因は人口の高齢化ではなく、各年齢階層内のグループ内格差の拡大であった。これまで、人口の高齢化の具体的な中身や1994年から1999年にかけての60歳未満世帯における所得格差拡大が生じているという事実については、ほとんど注目されてこなかった。