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論文要旨

Vol. 65, No. 1, pp. 1-22 (2014)

『二十世紀アメリカの養子と継子 —国勢調査個票データにみる長期的変遷—』
森口 千晶 (一橋大学経済研究所)

現代のアメリカでは、家族の多様化とともに、実親ではなく養親や継親のもとで養育される児童の割合が増えている。世帯構成(family structure)は子どもの健康や教育と強い相関を持つことが知られており、子どもの厚生に大きな影響を与えると考えられる。歴史的にも、実父母の保護に恵まれない児童は常に存在した。しかし、養子や継子を対象とした定量的な歴史分析は極めて少ない。そこで本論文では、1880~1930年と2000年のアメリカ国勢調査個票データを用いて、二親世帯に属する実子・養子・継子の社会経済的状況と教育環境を比較する。分析の結果、二十世紀初期には、白人の養子・継子および黒人継子については観察可能な世帯属性では説明できない実子との教育格差があったことが明らかになった。一世紀を経て養子・継子の相対的な養育環境に改善したが、継子については2000年にもなお実子との教育格差が観察される。