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論文要旨

Vol. 64, No. 4, pp. 338-352 (2013)

『市場経済移行と経路依存性 —体系的レビュー—』
溝端 佐登史 (京都大学経済研究所), 堀江 典生 (富山大学極東地域研究センター)

経路依存性は,移行国の制度変化の理解を助けかつ,移行国経済の発展経路の収斂ではなく,多様化を説明するベースになっている。本稿では,EconLitのデータベースからキーワード検索によって無作為に抽出した経路依存性に関連付けて移行経済を論じている文献「基本抽出論文」に依拠して,移行経済論における経路依存性論議の展開の動向,移行経済論が依拠する理論的傾向などを実証的に検討している。移行経済論における経路依存性論の理論的な発展系譜を明らかにしつつ,David Starkが経路依存性の発展の源泉として重要な位置をしめることを明らかにし,経路依存性論の支持度合いと独自にコーディングした文献属性の相関を分析している。実証分析により,経路依存性の支持度合いは2000年代に低下していること, 経路依存性研究はすべての移行諸国をカバーするが, 東欧圏でEUへの加盟が遅れている南東欧地域とロシアにおいて相対的に強く経路依存性の影響力が支持されていること, 制度, 地域およびローカルアイデンティティ研究において相対的に強く経路依存性が支持されていることを明らかにしている。