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論文要旨

Vol. 64, No. 2, pp. 119-131 (2013)

『多種類の所得調査を用いた我が国の所得格差の動向の検証』
田辺 和俊 (東洋大学現代社会総合研究所), 鈴木 孝弘 (東洋大学経済学部)

近年,我が国では所得格差の拡大の有無やその是非が大きな議論の的となっている.しかし,格差の動向については所得調査によって異なる結論が導かれている.本稿では各種の所得調査から導かれる格差やその動向の違いを検証する大規模調査研究を行った.そのために,現時点で入手可能な13種の所得調査データを用いて,戦後から現在までの長期間のジニ係数を計算した.所得格差の推移を統計学的に検証するために,時系列回帰によりジニ係数のトレンドを検定した.さらにジニ係数の計算結果に含まれる誤差を見積もるために,所得調査の標本誤差や所得階級集約の影響を解析した.その結果,ジニ係数のトレンドが所得調査の種類に大きく依存することから,格差の動向を議論する際には,多種類の所得調査を用いて総合的に考察する必要があることを明らかにした.