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論文要旨

Vol. 64, No. 1, pp. 62-75 (2013)

『インド・デリー市におけるサイクルリキシャ業 ―都市インフォーマルセクターと農村からの労働移動―』
黒崎 卓 (一橋大学経済研究所)

開発途上国における都市インフォーマルセクターと農村からの労働移動に関する事例研究として、本稿は、インド・デリー市におけるサイクルリキシャ業を分析する。主に用いるのは、デリー全域を対象とした標本調査から得た1,320名のリキシャ引きデータである。分析結果から、リキシャ引きの多数が農村部からの出稼ぎ者であること、都市への移動の際に各種インフォーマルなネットワークが重要な機能を果たしていること、所得水準は貧困線を顕著に上回っており、出身地にある程度の額を送金するに足りる水準であること、人的資本蓄積と収益性・所得の関係は非線形(低い水準でのみプラスの相関)であることなどが判明した。家計レベルでの長期的な貧困脱却には、次世代が人的資本を蓄積してその収益率が高い職種・業種に就職するような転換が不可欠であり、サイクルリキシャ業のような都市インフォーマルセクターはそのための短期的つなぎの役割を果たす可能性が示唆される。