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論文要旨

Vol. 63, No. 3, pp. 236-248 (2012)

『公共財供給実験における被験者の戦略的動機,社会的動機,混乱による動機』
山川 敬史 (大阪大学社会経済研究所)

どのような動機から自発的寄付メカニズムにおける公共財への寄付(投資)が起こるのか.本論文では,戦略的動機,社会的動機,混乱による動機について3種類のコントロールを用いて検討した.3種類のコントロールとは,被験者の組合せ方法(対戦する被験者を固定する場合(固定被験者)と毎回変える場合(変動被験者)),利得表(詳細な利得表と大雑把な利得表),相手の利得情報(知っている場合と知らない場合)である.実験結果は以下の通りである.1)利得表と相手の利得情報のすべての組み合わせにおいて,固定被験者は変動被験者よりも公共財への投資を多く行った.2)固定被験者の場合のみ,大雑把な利得表を用いた被験者は詳細な利得表を用いた被験者より多くの投資を行った.3)固定被験者の場合のみ,相手の利得表を知っている被験者は知らない被験者より多くの投資を行った.これらは公共財への投資が戦略的動機によるものであるとする仮説と整合的である.