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論文要旨

Vol. 63, No. 3, pp. 227-235 (2012)

『産業集積と労働市場 ――労働プーリングを通じた集積効果――』
中島 賢太郎 (東北大学経済学部), 岡崎 哲二 (東京大学大学院経済学研究科・経済学部)

本稿の目的は,労働市場を通じた産業集積の効果について実証的に明らかにすることである.企業の集積による労働プーリングは事業所固有ショックに対応した各事業所の雇用調整によってローカルな賃金が変動するのを緩和することを通じて企業の期待利潤の上昇に寄与することがこれまで示されてきた.本稿では日本の工業統計個票を用いて産業ごとに企業固有ショックの大きさを測定し,それと集積との関係について実証的な検討を行った.その結果,企業固有ショックの増大は統計的に有意に産業の集積を促進することが示され,その効果はその他の集積要因の制御や,推定式の特定化について頑健であることが示された.このことは,産業集積のベネフィットの一つとして労働プーリングを通じた企業利潤上昇効果が存在することを示唆する結果といえる.