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論文要旨

Vol. 63, No. 1, pp. 70-93 (2012)

『どのような企業が雇用を生み出しているか ――事業所・企業統計調査ミクロデータによる実証分析――』
深尾 京司 (一橋大学経済研究所), 権 赫旭 (日本大学経済学部)

本論文では,『事業所・企業統計調査』のミクロデータを利用して、どのような属性を持つ企業が経済全体の雇用創出に寄与しているのか、また、どのような産業が雇用創出の源泉なのかについて分析した。得られた主な分析結果は以下の通りである。1) 雇用創出の大部分はサービス産業において生じており、雇用喪失のほとんどは生産の海外移転やコスト削減のための合理化続いた製造業や公共事業が減った建設業で起きた。2)米国に関するHaltiwanger, Jarmin, and Miranda (2010) の研究と同様に、企業規模と雇用の純増率の間にマイナスの強い相関は見られなかった。雇用の純増率で見て最も活発に雇用を作り出しているのは、5人未満の零細企業と、雇用者500-5,000人の中堅企業であった。3)日本で雇用創出を担っているのは、中小企業というよりもむしろ、比較的社齢が低い企業であった。4)外資系企業や日本企業の国内子会社も雇用創出に寄与した。外資系企業の雇用拡大の大部分は、企業の参入・退出を通じた雇用の純増によってもたらされた。我々はまた、どのような産業で若い企業の割合が高いか、若い企業がどれほど大企業に育つことができるかも調べた。その結果、通信、金融・保険、対事業所サービス、機械、対家計サービスなどで、若い企業が活発に活動していることが分かった。