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論文要旨

Vol. 62, No. 3, pp. 270-280 (2011)

『科学・技術・イノベーション政策の経済学』
青木 玲子 (一橋大学経済研究所)

科学・技術・イノベーション政策を「政策のための科学」の観点で検討する。平成23年度科学技術予算3兆6,485億円は、15省庁に帰属する約300施策からなっている。科学・技術・イノベーション政策の基本は技術革新による生産性の改善を通して、経済成長に寄与することと、市場の失敗のために市場による投資が、社会的に望ましい水準よりも過少になることを是正するの2点である。しかし、代替エネルギーの確保や医療研究など政策目標は多様化し、政策のきっかけとなる市場の失敗の要因も多様になった。本稿では、まず、科学・技術・イノベーション政策の経済学的根拠を再検討し、経済学の進展とともに、政策も変わってきたことを確認する。次に、Steinmueller (2010)の技術政策の分類を科学・技術・イノベーション施策に拡張する。施策の設計と評価の手がかりが分類の目的だが、政策全体を俯瞰することができ、全体の設計の参考にもなる。最後に、今後の経済学の科学・技術・イノベーション政策への貢献の期待に言及してむすびにかえる。