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論文要旨

Vol. 62, No. 2, pp. 141-152 (2011)

『途上国における災害援助物資の村内分配--血族社会の相互扶助と階層--』
高崎 善人 (筑波大学人文社会科学研究科)

開発途上国での自然災害援助において,援助物資の村の中での分配は,村による自己分配,したがって村の制度と統治に依存する.本稿は,村内分配メカニズムとして,相互扶助と階層を検証する.フィジー農村部で独自に収集した家計調査データをもとに,救援・早期復旧フェーズ(食糧援助)と復旧・復興フェーズ(家屋建設資材援助)を比較する.援助が私的リスクシェアリングの一部として分配される場合,援助物資がいかに被災者に届いているかというターゲティング精度それ自体にはあまり意味がなく,私的移転(労働および現金・現物)と合わせた災害対処力こそが重要となる.血族関係に基づく相互扶助と社会階層が,相互に関連して援助物資の分配が行われる結果,有力者が優遇されることになる.