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論文要旨

Vol. 62, No. 2, pp. 113-128 (2011)

『タジキスタンの国際労働移民と外国送金--タジク移民は貧困削減的か--』
雲 和広 (一橋大学経済研究所)

旧ソ連構成国タジキスタン共和国は2006年以降4年間に渡り,国内総生産に対する受入外国送金の比率が世界で最も高い国となっている.タジキスタンの所得水準の低さ,そして急激な経済成長を見せるロシアとの間に有する特殊な関係がその背景にあることは多言を要さないが,移民と外国送金との関係が注目を集めるようになって久しいものの当該地域が研究の対象となることは多くない.本稿は2時点の家計調査個票により,タジキスタン家計そしてタジク国際労働移民のプロフィールを把握すると共に,旧ソ連構成諸国のうち最貧国であるタジキスタンにおける家計の所得水準と国際労働移民による外国送金・移民送出の可能性との関係を検討した.家計の所得水準は外国送金受入額との相関を有しておらず,移民と送金の利他的モデルは該当しないことが示唆される.かつまた所得の高い家計ほど移民送出の可能性が高いという結果が得られ,タジキスタンの国際労働移民は同国における貧困削減と親和的でない可能性が示された.