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論文要旨

Vol. 62, No. 1, pp. 1-19 (2011)

『公共的活動におけるモラル・モチベーション』
林 行成 (広島国際大学医療福祉学部), 奥島 真一郎 (筑波大学大学院システム情報工学研究科), 山田 玲良 (札幌大学経済学部), 吉原 直毅 (一橋大学経済研究所)

公共的経済活動における諸個人の意思決定が、単に消費に関する主観的選好の充足という動機に基づくのみならず、道徳的動機にも基づく経済社会においては、標準的な合理的経済人モデルにおいて望ましいと考えられていた「市場原理」的なメカニズムは、必ずしも優れた成果を発揮しない事が示される。すなわち、道徳的動機が帰結に関する場合には、公共的経済活動に対する報酬体系として、成果主義的な制度よりは、むしろ固定的報酬体系の方が、フリーライド問題の解決をより容易にする。また、企業組織の所有形態も、経営者に強い利潤動機を与える私有企業よりも、経営者に残余請求権を与えない公有企業の方が、モラル・ハザード問題の解決をより容易にする可能性がある。また、道徳的動機が行為それ自体に関する場合、環境改善等のCSR活動に無関心な純粋利潤最大化企業よりもそれに貢献する社会的責任企業の方が、より勤勉な労働者達を魅了し、結果的により高い生産性を実現する可能性がある。