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論文要旨

Vol. 61, No. 4, pp. 311-324 (2010)

『組織の調整力と製品アーキテクチャの適合性―輸出比率への影響―』
貴志 奈央子 (明治学院大学経済学部), 藤本 隆宏 (東京大学大学院経済学研究科)

国家間で貿易取引が行われる論拠としては、リカードやヘクシャー=オリーンらの論理に拡張・修正が行われる過程で、知見が蓄積されてきた。しかし、新しい貿易論においても、生産が開始される立地については偶然性が主張されている。こうした課題に対し、本稿では「設計」という概念を貿易論に導入し、設計費用の優位性が生産開始の立地を規定し、産業内貿易における競争優位性に寄与しているという比較設計費説の検証を試みる。比較設計費説は、リカードによる比較生産費の論理と、ヘクシャー=オリーンが提示した、国の特性と産業特性の適合性は比較優位を生むという論理の双方に立脚し、既存の貿易論に対し補完的機能を持つと位置づけられる。また、国内メーカーを対象とした予備的な分析では、設計費用を製品アーキテクチャによって定量化し、SEMを用いて検証した結果、比較設計費説に対する支持を得た。